2/1 エアギター

最近駅のホームで「神聖モテモテ王国」のファーザーを思わせる中学生がエアギターをやっているのをよく見かける。

 

最初に見た時はヘッドホンからギャンギャンと音を垂れ流し、見えないギターをじゃかじゃか

かき鳴らしていた。

これが若さかと思いながらも後ろに並んでいるとじきに電車が来て、彼のライブパフォーマンスも

つつがなく終了した。

 

しかし電車のドアが閉まった途端に怒涛のアンコールが開始。

電車の中はモッシュピットさながらに混み合っているにもかかわらず、だ。

 

縦横無尽に動き回る肘にオーディエンスの冷たい視線が刺さる。だがそれでも中学生は演奏をやめない。そのへんにしとけ、と注意したい気持ちではあったが「こんな公共の場で自分の世界に没頭出来るなんてむしろロックなんじゃないか」と一瞬思ったりもした。いや全然ロックじゃないけど。

 

狂乱のパフォーマンスは終点まで続き、彼は乗り換えの波に消えていった。

 

その翌週、同じ時間にホームに行くとまた中学生に出会った。
今日もまたギグか…とげんなりするような、少し期待するような気持ちで電車に乗ったが、中学生は微動だにしない。

どういうことだ?と思ったが原因はすぐにわかった。

 

3DSだ。

 

「どういうことだよ!!!お前のロックンロールはどうぶつの森に消されちまったのか!?!!!」と肩を揺さぶりたかったが他人に迷惑をかけなくなったということは良いことだ。

ロックは死んで、平穏な村の暮らしが残った。裸の犬、狸の悪徳商法、たまに釣れるクリオネ…そうだ、これでよかったのだ…

 

そして今週、彼はまた同じ時間にホームにいた。

ヘッドホンからの音漏れもなくなり、彼も大人になったのだなあと感慨深く思いながら後ろに並んでいると

微かに、彼の肘がリズムにあわせて動いているのが見えた。

彼の演奏は、小さいながらもポケットの中でまだ続いていたのだ。

 

でもそうやって小刻みに揺すってるとやっぱりナニをアレしてるように見えるし、家でやったほうがいいんじゃないかな。